きらりアート5人 展

2023年 4月28日~6月26日   金・土・日・月・祝祭日 10:00~16:30

『きらりアート5人』展 開催にあたって

今回は、若狭ものづくり美学舎きらりアート部、およびサテライトアトリエ春江、越前(ぴーぷるファン)で制作する優れたアーティスト5名の絵画を『きらりアート5人展』として展示いたします。

中西軍治の抽象的な絵画は、豊かな色彩と明快な幾何学的構成によって生み出されたシンプルな絵画として多くのファンを獲得し、人気を博してきました。しかし、無念なことに4月4日に急逝いたしました。慎んで哀悼の誠を捧げ、絶筆となりました小品をはじめ、近作を展示いたします。

藤原孝のイラスト的な絵画は、自らが描いたイラストを選び、構成することによって、日々の生活で体験したことや感じたことを率直に表現しています。また、集中し丁寧に時間をかけてつくり出された綿密で誠実な画面は、やさしい人間味に溢れています。

柴山信宏の半抽象的な絵画は、独自の豊かな色彩と繊細な筆致によって、障がい者を取り巻く社会と自らの存在を問う先鋭的な問題を、私たちに突きつけて、異彩を放っています。

杉本伸悟の構成的な絵画は、幾何学的形体を非規則的に組み合わせ心地よいリズムを生み出して、その画面は無限に拡がります。また、幾何形体の中にキャラクターなども描かれ、可愛さも魅力の一つです。

吉田圭佑のシンボリックな絵画は、表現したいものを四角形、円形、楕円形などを用いて端的に、明快に組み合わせた具象性のあるダイナミックな構成を特徴として迫力があります。

福井県に在住する障がいあるアーティスト5名にによる独自性に富んだ、優れた絵画の競演をゆっくりとお楽しみください。

熊川宿若狭美術館長 長谷光城


中西軍治

追悼 故 中西軍治

1943年 若狭町向笠に生まれる。
2023年4月4日死去。 享年79歳
何を描こうか常に構想しており、着実な制作姿勢で描き進めた。美術に関するテレビ番組、著書等に興味を持ち、展覧会にも足を運んだ。「若狭ものづくり美学舎きらりアート部」での制作、また、継続就労支援B型事業所「若狭ものづくり美学舎きらり」での制作時に助言を求めることが時たまあったが、自分の考えの確認のためであった。
初期の具象画から、現在の幾何学的構成による抽象画に至り、歳を重ねても意欲は衰えず、多くの作品を生み出し続けていた。常に笑顔を絶やさず温和な人柄とともに、具体的なイメージをシンプルな抽象画を生み出す「中西軍治ワールド」に魅せられてコレクションされる愛好家も多く、2022年度の若狭町ふるさと納税返礼品登録作品は、完売した。
2023年の秋、開催予定の福井県障がい者アート作品公募「第14回きらりアート展」に取りかかっていた矢先の西国への急な旅立ち、惜しまれてならない。


藤原 孝

藤原 孝

1975年 小浜市に生まれる
2004年、29歳から日記を書き始め、そこに挿絵として描いたイラストがきっかけとなり絵画制作を始める。小学校から文字を丁寧に書くことを心がけてきたこともあって、絵も計画通り丁寧に描き進める。体調によっては描かない日もあるが、毎日1時間前後キャンバスに向う。代表作「放浪の旅」は、2013年以来、描きためたイラストから選び抜き、組み合わせ構成したもので、約200時間、1年間近くをかけて完成させている。曲線を主に生み出し形体は、内面から溢れ出る意図に従って形づくられ、分厚く塗られる面は納得いくまで続けられる。


柴山信宏

柴山信宏

1977年 越前市に生まれる。
小学生の頃から好んで絵を描き始める。福井大学附属養護学校初代教頭で福井県の児童美術教育をリードした木水育男の「木水ベンキョー会」に参加していた担任・塚崎惠子が6年生の指導記録集として、「信宏君のたからもの」と題した冊子とスライドを残している。その担任から「好きなものを描いていいよ」と言われ、絵を描くことが益々楽しくなっていったとのこと。
その後、紆余曲折があったものの制作をつづけ、2012年の作品には、「ぼくがいきててぼくがうまれてごめんなさい」「負けない気持」と心の葛藤がそのまま題名になり、2014年になると作品「希望」が制作されている。しかし、2019年の作品「イラナイモノ」は再び暗い題名になるが、2022年には「負けるな『私』」と、自らを激励している。社会との関係性から自らの存在を問う名作を生み出している。


杉本伸悟

杉本伸悟 

1988年 福井市に生まれる。
2021年に開講された、若狭ものづくり美学舎きらりアート部サテライトアトリエ春江で制作を始めた。さまざまな形体を組み合わせた色彩豊かな幾何学的模様は、心地よい動きをともなって大きく拡がっていく。その画面構成は、幾何学的形体の規則的な組み合わせを思わせるがそうではない。非規則性によって画面全体に動きが生じ、繊細な画面でありながらダイナミックな絵画となっている。今後に期待できる新進気鋭の作家である。


吉田圭佑

吉田圭佑 

1995年 鯖江市に生まれる
若狭ものづくり美学舎きらりアート部サテライトアトリエ越前「ぴーぷるファン」が開講され制作に取り組み始めた。事業所での旅行やスポーツ大会などで、自分が体験したことや印象に残ったことを題材に絵画制作に挑んでいる。表現したいものを四角形や円形、楕円形などを組み合わせシンボリックに、画面中央にしっかりと描いている。展示されている「蒸気機関車」などは四角形でありながら、新緑の中を力強く走っている。幾何学的な描かれた他の作品も、見る者の想像を沸き立たせる力ある作品が多い。今後に期待できる作家である。