

ヒマワリについて
2000年よりヒマワリをモチーフにする。
枯れゆく中にも生命を全うする姿に感銘を受けた。
その後、種が地に落ちて次の季節には新しい生命の始まりが来る。
限りある生命を無心に生きる生命のサイクル、これはヒマワリも人も
生きるものすべての宿命である。
だからこそ、その時々を大事に生きていきたい。
私は制作の中で生きるものにエールを送ってきたが、何もなく生きることが普通ではない時がある。
2011年3月の東日本大震災の年には、あまりにも無残に生命をおびやかされた。
その年のヒマワリの制作は元気で逞しい表現はとても出来なくて、黒く被災したヒマワリになってしまった。
近年ではウクライナと、ロシアの侵略による戦いが人々の生命や自然を壊している。
ヒマワリは武器は持たない。ただ平和を祈ることしか出来ない。
2025年2月7日 伊藤ちづ子







伊藤ちづ子の絵画
伊藤ちづ子はヒマワリを描く画家である。しかし、ヒマワリと聞いて普通に思い浮かべる、野にすっくと生えた、正面を向いた大輪の黄色い花ではない。彼女の描くヒマワリは、花というよりもむしろ、生き物の頭部とでも呼んだ方がふさわしい。
年代を追って彼女の作品を見て行くと、2000年の最初のヒマワリ以降、2005年頃まで、ほぼ黒と白のモノクロームあるいはモノクロームに近い画面に、ヒマワリの頭部が比較的写実的に、かつランダムにいくつも描き込んである。
その後、写実的に大きなヒマワリの頭部を描き、その周囲に空間を描き出す。また、このような具象的表現と並んで、同じく大画面に、ヒマワリの頭部を正面から捉え、画面に横溢する円形の広がりとして描く抽象的な表現が生まれる。
芸術における表現は、言葉としてしばしば使われるほどには簡単ではない。何か自分の頭の中にあるものを表現しようと狙っても、人を打つものは出てこない。彼女のヒマワリが現前感を持つのは、彼女がヒマワリとの交感能力を持っているからである。
自分自身も含めたあらゆる生命現象の象徴としてヒマワリを描きたいということ、しかもそれは、今を盛りに咲き誇る生命の姿ではなく、流れ、崩れ、変化する生命の姿として描き出したいという気持ちが、ヒマワリと伊藤自身の間の距離を縮め、ついには同一化を生み出しているのである。つまり伊藤は、ヒマワリを見つめ、ヒマワリを描きながら、その中に自分自身を見ているのである。
伊藤の興味は、ごく最近は、ヒマワリの頭部より分散する種子を、一つ一つ描くことに移っている。生命の伝達、彼女自身は「輪廻転生」という言葉で、新たな興味の方向を言い表している。
そして今季節は巡り、種子の塊は、自然の原理に従って母体を離れ、新しいヒマワリを作るべく大地に分散し始めたのである。
福井県立美術館元館長 芹川貞夫
2017年発刊伊藤ちづ子画集寄稿文より抜粋















伊藤ちづ子略歴
経歴
1949年2月12日福井県敦賀市に生まれる
1990年10月 新協美術展初入選
2007年10月 新協美術展委員推
2017年3月 伊藤ちづ子画集 発刊
賞歴
2001年 第54回 福井県総合美術展知事賞
2003年 第 1回 命のかたち展最優秀賞
2003年 第17回 美浜美術展入選(2019年迄12回入選)
2005年 第48回 新協美術展新協賞
2006年 第45回 北陸中日美術展佳作賞
2006年 第16回 花の美術大賞展奨励賞
2008年 第47回 北陸中日美術展福井テレビ賞
2015年 第58回 新協美術展東京都知事賞
2023年 第66回 新協美術展東京都議会議長賞
表彰
2005年 福井県文化協議会新人賞
2006年 福井県文化奨励賞
2006年 敦賀市文化奨励賞
2012年 敦賀市文化協会 文化功労賞
2014年 福井県文化協議会地域文化功労賞
2024年 福井県文化功労賞
個展
2016年 福井県立美術館第1展示室(福井市)
2024年 敦賀市プラザ萬像大ホール(敦賀市)その他13回
所属
・ (一社)日本美術家連盟 会員
・ (一社)新協美術会 委員
・ 若狭湾美術作家集団 会員
・ カカ斜展 会員
・ 敦賀美術作家協会 副会長
・ 敦賀高校美術部OB展 代表
審查員
・ (一社)新協美術展
・ 福井県総合美術展
・ 敦賀市総合美術展
講座
2020年~現在まで 福井県立美術館実技講座講師(洋画)
教室
1997年4月~現在まで バーミリオンパステル画会主宰(敦賀)
2021年4月~現在まで 福井ベルカルチャー洋画講師(福井)
