平成30年8月17日 ~ 10月8日
Trace of Wrapping Iron
1977年……木とロープによる二物との関係と位相の記しを残した造形作品に取り組み、その後、木とロープの関係をより示すために鉄板も用いました。……1978年、丸太を山から切り出し、木そのものを問う作品を制作し、山に帰して展示。自然木の切り出しから朽ちるまでの過程を展示した……
「Trace of Wrapping Iron」シリーズは、それらの作品と同時期に始めたものです。
使った鉄板を外に置いていましたが、その鉄板が錆びていきました。鉄板に興味を失っていたものの、その錆びていく姿に目が向きました。モノが産み出されて朽ちて無くなっていく過程をとどめた作品をつくりたいと思いが強まりました。また、モノが朽ちていく時間への関心もありました。
造形とは形を造ると一般的に思われていますが、形にいたるとも解されます。自然の営みのように、水の流れが長い年月をかけて丸みがかった石を造りだすように、結果としてそのモノの形が造りだされるような制作をしたいとの思いもありました。
綿布を鉄板に巻き野外に置いて……半年間ほど経った時、綿布に鉄錆が浮かんできました。その綿布を広げた平面作品……
今回(2017)の作品は、鉄板に釘など身近にあるものを用いて、「Trace of Wrapping Iron」シリーズを深めたものです。
( 「跡~ 韋天瑜/長谷光城 芸術展」(上海・梧桐美術館 2017)での、長谷、自作を語る講演の草稿より )
長谷光城( ながたに みつしろ 1943〜 )
美術作家・教育者・地域の文化活動リーダーとして長年継続的に多彩に活動中。近年は「若狭美&Bネット」を立ち上げ、多機能教育施設「若狭ものづくり美学舎」、障がい者作品公募「きらりアート展」、「熊川宿若狭美術館」等を開設するほか、若狭町、美浜町の文化政策アドバイザーも。また、幼児の絵画と造形「いのちかがやく子ども美術」、中国上海の美術家や美術館との民間の文化交流等でも、国内外で多方面に活動を展開中。熊川宿若狭美術館館長。
作品は、木・紙・石などで主に自然とヒトの営みの関係、生死や精神性、時空を語る。近作では東日本大震災、津波災害をモチーフにした連作が鮮烈。 福井県若狭町在住。