蟻塚 知都 展




彫刻、とりわけカービングの仕事で問題となるのは、執刀する前の最初の形と量、つまり既に定められた空間をどのように操作するかということである。通常その既定の空間、つまり直方体であったり丸太であったりという最初の形と量は作品が完成に近づくにつれてその印象を薄くしていく。

しかしながらカービングの仕事は素材の絶対量を減らしていく操作であり、最初の既定の空間の印象から完全に逃れることはできない。従って彫刻について考えるときには、既定の空間を感じさせぬようにするよりも、むしろ既定の空間の印象を最後まで残し、どのような操作がその空間の中で行われたのかをありありと見せることが必要に感じられるのである。
この既定の空間こそが本展の作品群の特徴であるフレームである。このフレームは一見すると中の人体像を閉じ込める牢のようである。しかし人体像は後からフレームの中に閉じ込められたわけではなく、最初から既定の空間内に量として存在していた。とするとこのフレームは彫刻されるべき形の可動範囲や領分とも言うことができよう。

また、人体像そのものに目を向けると、無表情で静謐に感じられるものもあれば、大きく体躯を歪め抜け出そうとしているように見えるものもある。フレームを社会的なシステムと捉えた場合、そこから抜け出ようとするものもいればそこに安住する者もいる現代の人間像と重なる。

本展の空間そのものに目を向ければ、「人体像はフレームに囲われており、それらは各部屋というフレームに囲われており、各部屋は会場というフレームに囲われており、、、」というような多重構造が想像される。しかもそれらは複数存在しており、まるで生物の最小単位である細胞から宇宙へと視点を広げていくような、あるいは広大な宇宙からただ一点に向けてクローズアップしていくような感覚を覚えるのである。

本展におけるフレームは多義的である。人間という存在はフレームから抜け出そうとすると同時にフレームを作り出し収まっていこうともする。

私たちはこのフレームをどのような意味で捉えるべきであろうか。

蟻塚知都


  • 1997 福井市生まれ 福井市在住
  • 2019 国立台湾藝術大学木彫アトリエ交流
  • 2022 福井大学教職員大学院修了
  • 2020 個展「Arts Happen!」グラン・シェフ:クーゼー 他、福井県内レストラン
  • 2022 個展「蟻塚知都 飛んでいく男 2022 SHOUNDOアート駅伝」(匠雲堂/富山県南砺市)
  • 2022 個展「蟻塚知都 THE PLAYHOUSE OF OUR OWN」(ART SITE 25/福井市)
  • 2023 個展「蟻塚知都 HANGED MAN」(ギャラリーサライ/福井市)
  • 2024 個展「蟻塚知都 From a cell / To a cell」(分室ニホ/福井市) 他にグループ展多数


出地 瑠以 展



  • 1983 福井市生 福井市在住
  • 2005 米国オクラホマ州立ノースイースタン大学卒業
  • 2011 東京、ハワイでカメラマンとして活躍 福井にてフリーランスフォトグラファー
  • 2016 個展「ヴェール」 於:FLAT(福井市)
  • 2021 個展「出地瑠以写真展」 於:福井ものづくりキャンパス(福井市)
  • 2023 グループ展「Inter-Action」 於:AmericaBashiGallery(東京 恵比寿)
  • 2023 個展「288」 於:FLAT(福井市)
  • 2024 個展「288 / 野良猫に見られた」 於:NEST(大阪)

あとりえ風 展

「あとりえ風」の仲間たちは、余暇活動として月に一度集まり、ゆったりとした時間の中で、自ら描きたい世界を表現しています。
短い時間で一気に描きあげる仲間・・・
粘土や紙でもものづくりに集中する仲間・・・
筆と墨で描く文字を楽しむ仲間・・・
自ら個性を表したい気持ちがいっぱいです。
仲間たちの個性あふれる作品をご覧ください。





野瀬成夫 展 NOSE Naruo


野瀬成夫 NOSE Naruo

1944年生 美浜町在住
最近は墨跡(和紙)を利用して、壊して再生する平面作品に取り組んでいる。文字の形(甲骨文字、金文、篆文)と現代文字との関係が要素・字形は同一の意味を持つものとして、解釈し、図形化する。



きらりアート & 子ども美術 2024




きらりアート展 2023

11/23 ~ 12/24  金・土・日・月・祝日


「きらりアート展」は福井県在住の障がい者や特別な支援を要する人や児童たちのアート作品の公募展です。
一般の部の入賞作品を当美術館で展示、紹介いたします。純真でハートフルな表現をお楽しみ下さい。




坂本善三 展

坂本善三

熊本県阿蘇郡小国町生まれ熊本で活躍し、東洋的抽象画を生み出しました
子ども美術の分野で若狭と熊本との交流が深まり
その中で親交のあった二子石義之の師でもありました


臨場Ⅱ 後期 開催中


臨場Ⅰ 前期

現代美術作家の大山里奈、河口龍夫、長谷光城の3名が、熊川宿若狭美術館に12日間滞在し、観客とコミュニケーションを図りながら、「臨場」をテーマとした新作の構想から制作、完成までを完全公開。評論家の渡部葉子は3人と伴走しながらアートの臨場批評を行う。

臨場Ⅱ 後期

12日間のドキュメントを完成作品とともに構成し展覧。


河口龍夫

1940年神戸市生まれ。多摩美術大学絵画科卒業。筑波大学名誉教授。金沢美術工芸大学名誉客員教授。60年代より第一線で活躍し、鉄・銅・鉛といった金属や、光や熱などのエネルギー、化石や植物の種子などを素材に、しなやかな造形言語を用いて、生命や時間といった根源的なテーマを可視化する作品を発表している。「私はこれまで多くの美術館と画廊で個展を開催してきたが、あくまでも観客を意識した展覧会をしてきたように思う。展覧会を見ている観客が満ち足りる場を創作することを意識してきたのである。今回<臨場>が中心課題であるので、私がその場にのぞむことを重要視させるならが、<臨場>の、まさにその場で生きていることによる必然性によってのみ誕生する作品世界の創作に挑戦してみたいと願う。」

関係-無関係・脈拍 絵画
関係-無関係・脈拍 蓮の種子
関係-無関係・脈拍 こより 

長谷光城

1943年旧満州牡丹江生れ。福井県若狭町在住。多摩美術大学絵画科卒業。熊川宿若狭美術館館長。若狭の地で育ち、教職に就きながら、仏教に学び、自然と深く関わりながら日常生活を営むなかで、自然の素材である木や紙や石などを手にして、それらが語る言葉に耳を傾け、それらの素材と一体になって制作を行う。福井に起こった「北美文化協会」への参加を契機に、地域に根差す文化活動のオーガナイザーとしても尽力。子ども(幼児)アート、障がい者アートにも精力的に取り組み、美術の根底にあるアートの魅力、アートのちからを通して、新しい共生社会のあり方を試行し続けている。

箱体 上中
箱体 三方
箱体 西田・三方・三十三・鳥羽・瓜生・熊川・三宅・野木
箱体 若狭

大山里奈

1984年茨木県生れ。京都造形芸術大学(現京都芸術大学)大学院芸術表現学科修了。福島県葛尾村を拠点に活動。身近でなおかつ普遍的な存在である“水”や“光”の振る舞いに寄り添いながら、不安定なもの、変化し続け消えていってしまう出来事にフォーカスするインスタレーションを展開している。作品空間の中から”循環”や”余白”の感覚が”自然の時間”へと回帰する。「人は見えるものと見えないものの狭間を自由に行き来することができる。その方法は自分の内側に意識を向けること。私の仕事は、そのための入り口をそっとつくり出すことである。」

かつては、ひとつの水だった

渡部葉子

1961年東京生まれ。慶應義塾大学大学院文学研究科修了。慶應義塾大学アート・センター教授・キュレーター/慶應義塾大学ミュージアム・コモンズ(KeMCo)副機構長。近現代美術史を専門とし、東京都美術館、東京都現代美術館において学芸員として活動。2006年より慶應義塾大学アート・センターにて、展覧会や各種催事を企画実施する(現代美術のシリーズ展など)とともにアート・センターが所管するアーカイヴの活動にも関わる。「東京ビエンナーレ‘70」研究プロジェクトや慶應義塾の建築プロジェクトなど、アーカイヴ活動と展示やワークショップを結びつけた活動を実践している。近年はOBL(オブジェクト・ベースト・ラーニング)に関心を寄せ、KeMCoにおいて展開しようと試みている。

臨場する3つの景色
地景、生景、水景

3人の作家が制作する場に伴走し、観察する日々の中で見えてきた3つの景色があった。

地景—長谷光城は若狭の地を常に自分の場として生活し、制作し、活動してきた。常に若狭に臨場していたのではないか、と自らのことを語った。今回の作品では、まさに若狭町の現在地点の問題をテーマとし、社会風景を描き出そうとしている。

生景—河口龍夫は「臨場」というテーマを得て、日々の脈拍を契機とした作品を構想した。そこで実践しようとしたのは芸術と生きてきた河口が、「芸術を生きよう」とした制作の現場であった。

水景—大山里奈は若狭の地で臨場することを考察し、自らのモチーフである水を見直す。水という物質が、場所に結びつき、名付けられ、語られる。生活と制作とが水を通してはかられ、あたらしい物語を紡いでいく。

渡部葉子