
「東極」の磁場 in WAKASA 2025展では「東極」の地と関わりのある、アメリカ、中国、日本で活躍する5名の作家を新たに加え、10名の作家が結集して明日に開かれる表現の新たな可能性を開く磁場となることを目指す!
2023年、24年と、古代日本の大陸への窓口として開かれた若狭の地で開催されてきたが、第3回展となる今展では何に出会えるのだろうか。各作家が日本における抽象表現の受容の歴史を踏まえつつ、自らの表現における抽象表現との関わりの有りようをテーマとして、それぞれの主張をぶつけ合い、新たな地平を切り開こうとするものである。

市野泰通 ICHINO Yasumichi
1951生 神奈川県在住現代美術作家東京芸術大学デザイン専攻卒業
近年「すべての出来事は同時進行・・・」を念頭にインスタレーション作品を発表してきた。緯度や経度を含む作品をさまざまな環境と関連づける試みである。そこで用いられてきた鉛直線は経度・緯度がX軸・Y軸ならZ軸に相当し、地球の中心方向へと向かうベクトルのことであるが、地球の反対側では全く逆方向を指し示すことになる。要は同じベクトルの鉛直線は存在しないということか。今回の作品では、そんな不思議な状況を可視化することを試みた。




加藤真美 KATOMami
1960生 米国フィラデルフィア在住現代美術家武蔵野美術大実技専修科卒業東京芸術専門学校卒業アーツ大卒業
今回のグループ展は、私にとっていつもの発表の場より自由度がある状況でした。いつもは緊張度を上げて作り込んでいくのですが、今回はその自由度の中で、今まで凝り固まった体を伸ばしてほぐす、といったアプローチの仕方で制作を試みてみました。
ここ数年気になっていることの一つに「Causality」という現象があります。これは仏教、物理学、生物学等に共通してみられる事象の捉え方なのですが、原因があり、それに対する反応が起こり結果が生まれる、そしてその繰り返しが永遠のように続くと同時に、あらゆるレベルで起こるといったような状況のことです。このことを踏まえて、私の作品はマッスのあるソリッドな側面が減り、変化する状況自体を視覚化するような作品に移り変わってきました。今回の作品もその延長上として作られています。




小林雅代 KOBAYASHI Masayo
1985生 福井県在住現代美術作家 京都造形芸術大美術工芸学科陶芸コース卒業
東極という言葉や意味を自分なりに考えると、人と人や環境、文化が混ざり合い、道のようにつながっているように思えます。この東極2025で作家、作品がつながることにより、今までになかった出会い、感覚が生まれると思い、胸が躍ります。今回の作品は、人と人、環境と環境が混ざり合ってつながっていくというコンセプトでしました。



中川 猛 NAKAGAWA Takeshi
1950生 神奈川県在住 現代美術作家 東京芸術大学大学院絵画科壁画専攻修了
都市の象徴としての「NEOZIGGURT」シリーズの発表を2013年より続けて来ている。ZIGGURT(ジッグラト)とは、「高い所」を意味するアッカド語で紀元前三千年頃の古代メソポタミアにおいて、バビロンなどの都市に建てられた塔をこの名で呼ぶ。ジッグラトを中心に世界最初の都市国家が誕生したわけで、現代の都市文化の源流とも見なしうる。旧約聖書の「創世記」に記されるバベルの塔もZIGGURTが伝説化されたものという。日本も含め世界が都市化の流れの中で、幾何学構成によるNEOZIGGURT作品を、批判的視点も交え制作している。今展ではそのクリアーに見通せるようで見えない、迷路のような一部を取り出し構成し、回廊として制作を試みた。




長谷光城 NAGATANI Mitsushiro
1943生 福井県在住 現代美術作家 多摩美術大学絵画科油画専攻卒業
山々を愛した詩、
山々を描いた絵、
セザンヌが描いた山。
しかし、今、私の在所を取り囲む山々は親しみを遠ざけていく。そして、山の木々が白骨の四華花となって咲き乱れ、生み出される形相。在所が世界に通じているように、その形相が世界を覆っていく。一見、狂ったシナプスを思わせるその形相は、滅び行く儚さ、そのひとときが生む出す形相か。


范鐘鳴 FAN Zhongming
1958生 上海在住 現代美術作家 上海師範大学卒業
3年間にわたる「東極」展に参加するたびに、私は自らが本当に求めているものを検証する機会を与えられていると感じている。振り返ってみれば、私は常に「絵画」への興味を抱きながら、その可能性を追求してきた。とりわけ、絵画を構成する要素
平面、支持体、絵具、色彩、モチーフ、内容といったあらゆる条件を一つひとつ丁寧に再認識し、究極的には制作の現場で見直し続けてきた。
具体的には、身の回りの日常品を「絵具」のように扱い、それらを積み重ねることで絵画を構築している。それらの素材は、作品のトリガーでもあり、主題先行でも様式先行でもない、これまで想像もしなかった新しい絵画を試す実験台でもある。



山根秀信 YAMANE Hidenobu
1959生 山口県在住現代美術作家東京芸術専門学校卒業
自身の生の空虚さからの逃避という個人的な感情から制作活動を始め、現在は風景の中に生の意味の不在を見ることで、社会的、歴史的な視点から生を捉えようとしている。
風景を撮影した画像を油彩画にしている。画像とは、スクリーンを挟んで世界を主体の対象として支配する視線であり、そこに生の意味の不在という意識を見ている。そして風景はその様な意識の現れの場として読み取ることが出来る、という考えの下、その視線をいかに変容できるか、をテーマとして制作している。







羅入 RAJYU
1969生 長野県在住 現代美術作家・パフォーマンス
個の顕在意識と無意識を抜けた先に広がるあまねくイノチの集合的無意識をさらに抜けた大元を、私は「根源」と呼ぶ。私はそこからじ、そこに在り、そこへ帰す。長い紙の作品は、日本に残された古層の大霊場・諏訪にて、動く瞑想をしながら観想(≒イメージ)した夜明けに開く根源の門へ向かった行の痕跡であり、予祝呪術である。制作の際に身に着けた着物と合わせて「根源へと開いた場」を現す。



張羽 ZHANG YU
1959 生 北京在住 現代美術作家 天津工芸美術学院卒業
指印 20250405-0921
これは私が「東極」展のために特別に制作した作品であり、2025年に制作した唯一の「指印」作品です。この「指印」作品は、これまでのどの「指印」作品とも異なる点がいくつかあります。まず、私は初めてこのアクリルのグリーンという色を使いました。この色は直感で選びましたが、日本の「東極」が面する海の色にふさわしいと感じました。また、今回の「指印」作品の支持体(キャンバス)にはプラスチック製の帆布を用いました。これは視覚的な透明感透け感を表現するためです。展示方法も、とてもシンプルで、日常的で、気軽な吊るし方をしています。カーテンを掛けるよりも簡単です。「指印」の核心は、あくまでも体験と知覚としての芸術表現です。



石川雷太 ISHIKAWA Raita
1965生 茨城県在住 現代美術作家・パフォーマンス 東京芸術専門学校卒業 羅入らとパフォーマンスユニット「混沌の首」を2008年に結成
Trueromance2025×熊川宿
言葉の不可能性を言葉で証明するための言葉の作品
そして最後に投げ捨てるべきもの
FragmentProject×熊川宿
赤板(赤い黒板)の上に、観客が自由に書き込むことで完成される掲示板型インスタレーション作品。断片の集積の中に世界が見える。






